宇宙でも高い精度を実現!
意識の変革が生み出した
MRN-01
Solution
国産部品でロケットを飛ばしたい。そんな声に応えて開発が始まったMRN-01。宇宙の過酷な環境に耐えるためには、これまでの民生品よりもはるかに高い要求に応え続ける必要が。一つひとつの壁を確実に乗り越えていくことで、高精度で高耐久、放射線にも強いMRN-01は誕生しました。
国産部品で宇宙へ
ロケットの部品開発国産化を起爆剤として、日本の産業をもっと活発にしたい。JAXAの声掛けのもとで始まったプロジェクトの一つが、MRN-01の共同開発です。従来、大型の人工衛星やロケットに用いられる部品は、最初から宇宙用に開発された高価なものが採用されていました。しかし、現在はロケット部品の低コスト化、小型軽量化が求められるようになり、安価な外国製品との価格競争も激化しています。その打開策として期待されているのが民生品の技術の高精度化。特にMEMSの技術は日々精度を高めているうえに、振動や温度変化への耐性も向上しているのです。こうした背景の中、一般向け製品の部品を使用して低コスト化と小型軽量化、更に宇宙固有の放射線耐久性要求へも適応する日本企業発の製品としてJAXAと開発したのが、MRN-01です。
宇宙へ行く製品を作るため、意識の変革を
宇宙で使う製品をつくる。それは、当社にとって初めての挑戦でした。最も大きな壁は「宇宙」という特殊なフィールドで、性能を発揮するための多種多様な条件をクリアすることでした。例えばロケット打ち上げ時にかかる振動と衝撃にどう対応するか。ジャイロ開発をするうえで、振動や衝撃への知見と対策は当社でも持ち合わせていました。しかし、宇宙で使う場合に必要とされるレベルは従来よりも格段に高かったのです。日常的に使用する場合は許容できる数値でも、宇宙では大きな問題を生じさせてしまうかもしれない。根底から意識を変化させる必要がありました。
まず、従来使用されていたリングレーザージャイロに代えて、民生分野で広く普及する高精度MEMSジャイロセンサを提案し、低コスト化を実現。製品ラインナップの中でも特に高い精度を誇るシリコン・リング振動型ジャイロをベースに、更なる改良を重ねました。温度特性のデジタル補正で温度変化への耐性を持たせ、MEMSセンサーヘッドの特性改善で振動対策を施しました。さらに、高精度なMEMS式ジャイロセンサとMEMS加速度計によって構成されるIMU(慣性センサユニット)を2ユニット内蔵。一つのユニットが放射線の影響で停止してしまった場合でも、もう一つのユニットが働きを維持する構造(冗長化)とし、宇宙での想定外のトラブルにも対処できるように設計しました。また、繰り返されるシビアな検査のなか、幾度も改善を重ねることで高い要求を一つひとつ確実にクリアしてきました。こうした試行錯誤の末、一般的なMEMSジャイロセンサの10倍以上の精度を保ったまま、振動・衝撃・放射線などあらゆる特殊な環境に耐えうるMRN-01は完成しました。
普段とは大きく異なる使用条件に苦しまされながらも、宇宙環境という厳しい環境下で動き続ける製品を作るために、解決策を徹底的に追求する姿勢があったからこそたどり着いた製品です。
宇宙が製品の可能性を広げた
幾多の試行錯誤を経て完成したMRN-01。宇宙という過酷な環境でも使用できる製品を作り上げたノウハウは、他の製品にも活きています。将来の人工衛星やロケット開発に役立つことはもちろんのこと、このプロジェクトで得た技術と知見は、当社の製品の幅を一層広げてくれました。